ママ言。

あるママの子育て小説。あなたもきっと経験した事あるはず。

無言の小学校4年生。

 

月が綺麗だ。

小学校4年生の娘がベランダに篭って30分経過した。祖母はすでに食事を終え、もう堪えられないといった感じで娘に話しかける。
「時にはこういう時もある。我慢して部屋に入ってご飯を食べなさい。」
そういって自主学習ノートを娘から取り、部屋の中に誘導しようとする。
しかし、娘は無言だ。
娘は、ノートを取り上げられ手持ち無沙汰になり、空を見上げる。
今日は、満月になりそうな丸い月だった。

娘の頑固な様子を見て、お手上げの祖母。母の私は、こんなことを思い出した。

 

娘が3才の時に、お昼寝から起きたり、上手く行かないと癇癪を起こしていた娘の様子だ。部屋の角をじっと見つめ、決して目を合わせようとしなかった。目を合わせたら、負けてしまうかのように、娘は決して目を合わそうとしなかった。母親の私は、ひたすら待った。娘の心が自分に元に帰ってくると信じて。どんなに泣き叫んでも、
「言いたい事があるなら、ちゃんと聞く。だから、自分の気持ちを言葉にしてごらん?!」


母は強い。その時私は、自分自身が娘と共に強くなっている事を感じた。


夕食が終わり、ついに母親の出番だ。ボスキャラが最後に登場するように、私はいつもみんなのアプローチが終わってから娘と関わるようにしている。

ベランダを覗くと、娘は頭上の大きな月を、顎をあげて見とれている様子だった。そこへ足を踏み入れると、娘は急に現実に戻されたように自分の身体を隅へ隠した。

「出てきなさい」
と私。我ながら、なんともボスキャラらしい登場だ。
「出てきなさい。」
もう一度。3歩下がって、観念したのか、しぶしぶ姿を現す娘。

顔を手で隠している。3才児と変わらない。私と目を合わすのが怖いのだ。

「言いたい事は、言葉にしなきゃ伝わらないんだよ。」

無言だ。
静かに隅に座り込み、顔をひた隠しする娘。そんな娘を見て、娘がこっそりこちらの様子を伺った時に目が合わないように、夜空を見上げる。

月が綺麗だ。

月に心を奪われ、言葉を失った。
どんな環境でも、目を奪ってしまう物が存在した。
娘もきっと、無心で月を見ていたら、あっという間に時が過ぎてしまったのだろう。私が話すのを辞めてしまったので、こっそり覗いている娘の視線を感じる。いつも怒ってばかりに思える母親も、人間らしい一面があったのかと思ったのかもしれない。月から目を話さず私はこう言った。

「あなたなら、素敵な優しいお姉ちゃんになれるって、信じてる。信じてるから、繰り返し怒るんだよ。信じてなかったら、怒ったりしない。」

 

娘が顔をあげた。前髪が長くて表情は読み取れないが、顎に涙がしたたる様子が見えた。

 

 

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